施設賠償責任保険で保険金が支払われない主な場合とは?

施設賠償責任保険で保険金が支払われない主な場合とは?

賠償責任保険の構造

賠償責任保険は通常、「普通保険約款」と「特別約款(特約)」から成り立っています

“特約”と聞くと、オマケのような、またはトッピングのような印象を持ってしまうかもしれませんが、賠償責任保険の特約はその保険の性格を定めるもので、なくてはならないものです。

普通保険約款が賠償責任保険全体の共通事項を定めており、特別約款(特約)にて具体的にどんなリスクを補償するか限定したり、アレンジしたりしています。

ちなみに、三井住友海上の賠償責任保険約款を見ると、
・普通保険約款部分が13ページ程あり、
・特別約款(特約)部分が160ページ程あります。

このページ数の違いを見ても、普通保険約款部分が基本的なことを定めていて、特別約款(特約)部分でより具体的な細々としたことを定めているのだろうということが推測されます。

普通保険約款では、賠償責任保険全体を通して共通の「保険金を支払う場合」や、「保険金を支払わない場合」、「保険金の種類」「契約者の告知・通知義務」など基本的なことを定めています。

そのうえで、特別約款(特約)では、より具体的なリスク(保険事故)についてどのように補償するのかを定めているのです。

「施設賠償責任保険」とよくいいますが、正式には、

賠償責任保険普通保険約款 + 施設所有(管理)者特別約款

となります。

↓他の賠償責任保険の例

PL保険 賠償責任保険普通保険約款 + 生産物特別約款
請負業者賠償責任保険 賠償責任保険普通保険約款 + 請負業者特別約款
受託者賠償責任保険 賠償責任保険普通保険約款 + 受託者特別約款

このうえさらに、細かな特約を必要に応じて付帯したり、事故時には被害者からの請求に応じて保険金支払を行うので相手の心象にも配慮しなければならないなど、賠償責任保険は火災保険等のモノ保険に比べれば難易度が高いと感じる方も多いのではないでしょうか。

↓損害保険種類の大別など

施設賠償責任保険 保険金を支払う場合

施設賠償責任保険は、普通保険約款と施設所有(管理)者特別約款の組み合わせでできており、この保険がどんな事故の場合に機能するのか理解するためには、普通保険約款と特別約款の両方の、「保険金を支払う場合」と「保険金を支払わない場合」を確認する必要があります

▼(参考として)三井住友海上・2018.4賠償責任保険「普通保険約款」の保険金を支払う場合

第1条(保険金を支払う場合)
当社は、被保険者が、保険期間中に発生した他人の身体の障害(注1)または財物の滅失、破損もしくは汚損(注2)(以下「事故」といいます。)について、法律上の損害賠償責任を負担することによって被る損害(以下「損害」といいます。)に対して、この約款に従って、保険金を支払います。
(注1)身体の障害
傷害および疾病をいい、これらに起因する後遺障害および死亡を含みます。
(注2)財物の滅失、破損もしくは汚損
財産的価値を有する有体物の滅失、破損または汚損をいい、紛失または盗取もしくは詐取されることを含みません。

▼「施設所有(管理)者特別約款」の保険金を支払う場合

第1条(保険金を支払う場合)
当社が、保険金を支払う賠償責任保険普通保険約款(以下「普通保険約款」といいます。)第1条(保険金を支払う場合)の損害(以下「損害」といいます。)は、次のいずれかに該当する損害に限ります。
① 被保険者による保険証券記載の不動産または動産(以下「施設」といいます。)の所有、使用または管理に起因する損害
② 施設の用法に伴う保険証券記載の仕事(以下「仕事」といいます。)の遂行に起因する損害

簡単にいえば、以下のようになります。

①施設の所有、使用、管理に起因した対人・対物事故を補償する。
②仕事(業務)遂行に起因した対人・対物事故を補償する。

施設賠償責任保険 保険金が支払われない場合

▼三井住友海上・2018.4賠償責任保険「普通保険約款」の保険金を支払わない場合

第6条(保険金を支払わない場合)
当社は、直接であると間接であるとを問わず、被保険者が次のいずれかに該当する損害賠償責任を負担することによって被る損害に対しては、保険金を支払いません。
① 保険契約者または被保険者(注1)の故意によって生じた損害賠償責任
② 被保険者と第三者の間に損害賠償に関し特別の約定がある場合において、その約定によって加重された損害賠償責任
③ 被保険者が、所有、使用または管理する財物を滅失、破損もしくは汚損した場合、その財物につき正当な権利を有する者に対して負担する損害賠償責任
④ 被保険者と生計を共にする同居の親族に対する損害賠償責任
⑤ 被保険者の使用人が、被保険者の業務に従事中に被った身体の障害に起因する損害賠償責任
⑥ 戦争、外国の武力行使、革命、政権奪取、内乱、武装反乱その他これらに類似の事変もしくは暴動(注2)または騒擾じょう、労働争議に起因する損害賠償責任
⑦ 地震、噴火、洪水、津波などの天災に起因する損害賠償責任
⑧ 液体、気体(注3)もしくは固体の排出、流出もしくはいっ出に起因する損害賠償責任。ただし、不測かつ突発的な事故によるものを除きます。
⑨ 原子核反応または原子核の崩壊に起因する損害賠償責任。ただし、医学的、科学的利用もしくは一般産業上の利用に供されるラジオ・アイソトープ(注4)の原子核反応または原子核の崩壊による場合を除きます。(注1)保険契約者または被保険者
保険契約者または被保険者が法人である場合は、その理事、取締役または法人の業務を執行するその他の機関をいいます。

(注2)暴動
群衆または多数の者の集団の行動によって、全国または一部の地区において著しく平穏が害され、治安維持上重大な事態と認められる状態をいいます。

(注3)気体
煙、蒸気、じんあい等を含みます。

(注4)ラジオ・アイソトープ
ウラン・トリウム・プルトニウムおよびこれらの化合物ならびにこれらの含有物を含みません。

▼「施設所有(管理)者特別約款」の保険金を支払わない場合

第2条(保険金を支払わない場合-その1)
当社は、普通保険約款第6条(保険金を支払わない場合)に規定する損害のほか、次のいずれかに該当する損害に対しては、保険金を支払いません。
① 施設の新築、修理、改造または取壊し等の工事に起因する損害
② 次のいずれかの所有、使用または管理に起因する損害
ア.航空機
イ.パラグライダー、ハンググライダー、パラセーリング、熱気球
ウ.昇降機(注1)
エ.自動車(原動機付自転車を含みます。ただし、販売等を目的として展示されている(注2)場合を除きます。)
オ.施設外における船舶または車両(注3)
③ 給排水管、暖冷房装置、湿度調節装置、消火栓、業務用器具もしくは家事用器具からの蒸気もしくは水の漏出もしくはいっ出またはスプリンクラーからの内容物の漏出もしくはいっ出による財物の損害
④ 被保険者の占有を離れた商品もしくは飲食物または被保険者の占有を離れ、施設外にあるその他の財物に起因する損害
⑤ 仕事の完成(注4)または放棄の後に仕事の結果に起因する損害

(注1)昇降機
財物のみを積載する昇降機、サービスステーション施設内にあるオートリフト、機械式の立体駐車場は除きます。
(注2)販売等を目的として展示されている走行している間を除きます。
(注3)船舶または車両自転車、身体障害者用車いす、歩行補助車および原動力が専ら人力であるものを除きます。
(注4)仕事の完成
仕事の目的物の引渡しを要する場合は引渡しをいいます。

第3条(保険金を支払わない場合-その2)
(1)当社は、被保険者が行うLPガス販売業務の遂行(注1)に起因して生じた損害に対しては、保険金を支払いません。
(2)この保険契約においてLPガス販売業務とは、LPガスの供給およびこれに伴うLPガスの製造、貯蔵、充てん、移動などの業務をいい、器具(注2)の販売、貸与ならびに配管、器具(注2)の取付け・取替え、器具(注2)・導管の点検・修理などの作業を含みます。

(注1)LPガス販売業務の遂行
LPガス販売業務のための事業所施設の所有、使用または管理を含みます。

(注2)器具
LPガス容器その他のガス器具をいいます。

第4条(保険金を支払わない場合-その3)
(1)当社は、石油物質が保険証券記載の施設から公共水域(注)へ流出したことに起因して、被保険者が次のいずれかに該当する法律上の損害賠償責任を負担することによって被る損害に対しては、保険金を支払いません。

① 水の汚染による他人の財物の滅失、破損または汚損に起因する賠償責任
② 水の汚染によって漁獲高が減少しまたは漁獲物の品質が低下したことに起因する賠償責任

(2)当社は、石油物質が保険証券記載の施設から流出し、公共水域(注)の水を汚染しまたはそのおそれのある場合において、その石油物質の拡散防止、捕収回収、焼却処理、沈降処理、乳化分散処理等につき支出された費用その他の損害の防止軽減のために要した費用に対しては、被保険者が支出したと否とを問わず保険金を支払いません。

(3)この保険契約において石油物質とは、次のいずれかに該当するものをいいます。
① 原油、揮発油、灯油、軽油、重油、潤滑油、ピッチ、タール等の石油類
② ①の石油類より誘導される化成品類
③ ①または②のいずれかに該当する物質を含む混合物、廃棄物および残さ

(注)公共水域
海、河川、湖沼および運河をいいます。

第5条(保険金を支払わない場合-その4)
当社は、直接であると間接であるとを問わず、被保険者またはその使用人その他被保険者の業務の補助者が行う次のいずれかに該当する行為に起因する損害に対しては、保険金を支払いません。

① 身体の障害の治療・軽減・予防・矯正、診察、診断、療養の方法の指導、出産の立会い、検案、診断書・検案書・処方せんの作成・交付等の医療行為、美容整形、医学的堕胎、助産または採血。その他法令により、医師または歯科医師以外の個人が行うことを許されていない行為。ただし、法令により医師または歯科医師以外の個人が行うことを許されている行為を除きます。

② はり、きゅう、あんま、マッサージ、指圧または柔道整復。法令により、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師または柔道整復師以外の個人が行うことを許されていない行為を含みます。

③ ①または②に規定する行為のほか、理学療法士、作業療法士、臨床工学技士、診療放射線技師、弁護士、外国法事務弁護士、公認会計士、建築士、設計士、司法書士、行政書士、弁理士、税理士、社会保険労務士、土地家屋調査士、技術士、測量士または獣医師がそれらの資格に基づいて行う行為

保険金が支払われない場合を見ていると、気が遠くなりそうですが、保険会社が作成する保険募集ツールのなかには、「保険契約にあたってはパンフレット・約款等をよくご確認のうえお申込みください」などと書いてあることもあります。

細かい文字・文章をよく読むような職業の方なら読めるかもしれませんが、普通の方はまず約款を読むことはないですよね。

保険代理店の人でも、事故があって、さらに保険が払われないとか、顧客から難しい質問があったなどの場合にのみ約款を開く、という感じが普通だと思います。保険会社の方でも、商品開発を行う部署や事故対応を行う部署以外の方はそこまで約款を読んでいない印象です。

施設賠償責任保険の保険金が支払われない場合をピックアップして簡単に表すと次のようになると思われます。

ケース コメント
故意 わざと起こした事故はダメですよね。ケンカなどもダメです。
第三者(被害者)との間に特別に約定した(勝手に決めた)賠償責任 たとえば「これを壊したら100万円」など当事者間で決めている契約書などがあっても、保険会社が支払う保険金は法律に基づいて支払うべき時価額がベースになりますので、差額が発生するかもしれないという意味です。
被保険者が所有、使用、管理するものを壊した場合 たとえば借りている建物なら、借家人賠償責任保険でカバーします。借りたり預かったりしている財物なら受託者賠償責任保険でカバーします。自社所有の物件を誤って壊した場合は、火災保険、動産総合保険などのモノ保険の領域になります。
被保険者の同居の親族に対する賠償責任 同居の親族は保険上、他人ではないのですね。
使用人(従業員)が勤務中にケガした場合 勤務外(プライベート)でケガをして、その責任が会社(被保険者)にある場合は別です。
地震、噴火、洪水、津波などの天災によるもの 天災による損害は基本的に法律上の賠償責任が生じないとされています。ただし、施設の管理状況が悪かったことが原因であるなら話は別です。
原子力関係  
アスベスト関係  
工事中の事故 請負業者賠償責任保険でカバーします。
航空機、パラグライダー等、自動車、船舶の所有、使用、管理に関する事故 航空機なら航空機保険、パラグライダー等ならスポーツ賠償責任保険、自動車による事故は自動車保険で、船舶なら船舶に関する保険が別途あります。
提供済みの飲食物に起因する事故 生産物賠償責任保険でカバーします。

など

賠償責任保険は、保険種類の中でも難易度の高い分野になると思いますが、施設賠償責任保険の上記でピックアップした保険が支払われない場合をチェックいただければ、大枠の把握はできるのではないかと思います。

また、保険金が支払われない場合(免責事項)については、その免責事項を削除する特約をさらに付帯することで、補償対象とすることができるようにすることができる場合もあります。

(注)当サイトでは保険について一般的と思われる内容を記載しております。個別具体的な保険契約内容についてはパンフレットや重要事項説明書、約款をご確認いただくか、保険代理店または保険会社へお問い合わせください。
リスクマネジメントレポートピックアップ!
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リスクマネジメント最前線「高潮リスクを考える~新たな高潮浸水想定区域図の公表と企業における活用方法~」(9ページ2018.8.7東京海上日動リスクコンサルティング

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