テロによる物理的攻撃は保険の対象になりますか?

テロによる物理的攻撃は保険の対象になりますか?

2011年~2017年のテロ事件

有名企業や集客施設であればなおさらですが、リスク管理としてテロの危険性についても考えている企業はあると思います。(ここではサイバー攻撃ではなく、物理的な攻撃として)

テロによる破壊が起きれば、人の死傷、施設損壊、事業停止などのリスクがあります。

テロによる被害について保険でどこまでカバーできるのか確認してみたいと思います。

▼2011年~2017年までのテロ事件(wikipediaより)

日付 事件 死者 負傷者
2017年12月11日  アメリカ合衆国 ニューヨーク・バスターミナル爆破事件(英語版) 0 4
2017年11月24日  エジプト エジプト・シナイ半島モスク襲撃テロ事件 309 128
2017年10月31日  アメリカ合衆国 ニューヨーク・マンハッタン自動車突入テロ事件(英語版) 8 12
2017年10月14日  ソマリア モガディシュ爆弾テロ事件(英語版) 358 400
2017年9月15日  イギリス パーソンズグリーン爆弾テロ事件(英語版) 0 30
2017年8月17日  スペイン バルセロナテロ攻撃事件 13 110
2017年8月12日  アメリカ合衆国 ユナイト・ザ・ライト・ラリー自動車突入事件 1 19
2017年7月24日  パキスタン ラホール自爆テロ事件(英語版) 26 54
2017年6月23日  パキスタン パキスタン爆弾テロ事件(英語版) 96 200
2017年6月19日  イギリス ロンドン・フィンスベリー・パーク襲撃事件 1 10
2017年6月7日  イラン テヘラン同時テロ事件(英語版) 13 43
2017年6月6日  フランス ノートルダム大聖堂前警官襲撃事件(英語版) 0 1
2017年6月3日  イギリス ロンドン橋・バラマーケット襲撃テロ事件 7 48
2017年5月31日  アフガニスタン カブール・トラック爆弾テロ事件(英語版) 150 463
2017年5月26日  アメリカ合衆国 ポートランド列車殺傷事件(英語版) 2 1
2017年5月22日  イギリス マンチェスター・アリーナ自爆テロ事件 22 59
2017年4月20日  フランス パリ・シャンゼリゼ通り警官銃撃事件(英語版) 1 3
2017年4月15日  シリア アレッポ自動車自爆テロ事件(英語版) 126 55
2017年4月9日  エジプト エジプト・コプト教会爆破テロ事件(英語版) 45 126
2017年4月7日  スウェーデン ストックホルム・トラック突入テロ事件 5 15
2017年4月3日  ロシア サンクトペテルブルク地下鉄爆破テロ事件 14 64
2017年3月22日  イギリス ロンドン・ウェストミンスター襲撃テロ事件 5 40
2017年1月29日  カナダ ケベックシティー・モスク銃撃事件(英語版) 6 19
2017年1月8日  イスラエル エルサレム・トラック暴走テロ事件(英語版) 4 17
2017年1月1日  トルコ イスタンブール・ナイトクラブ銃撃テロ事件(英語版) 39 70
2016年12月19日  ドイツ ベルリン・クリスマスマーケット襲撃テロ事件 11 56
2016年12月10日  トルコ イスタンブール爆弾テロ事件 46 166
2016年9月17日  アメリカ合衆国 ニューヨーク・ニュージャージー連続爆発事件 0 35
2016年8月20日  トルコ ガジアンテプ自爆テロ事件(英語版) 57 66
2016年7月22日  ドイツ ミュンヘン銃撃事件 9 36
2016年7月14日  フランス ニース・トラックテロ事件 85 434
2016年7月3日  イラク バグダード爆弾テロ事件 340 246
2016年7月1日  バングラデシュ ダッカ・レストラン襲撃人質テロ事件 24 50
2016年6月28日  トルコ アタテュルク国際空港襲撃事件 45 238
2016年6月12日  アメリカ合衆国 フロリダ銃乱射事件 49 58
2016年6月7日  トルコ イスタンブール爆弾テロ事件(英語版) 12 51
2016年3月27日  パキスタン ラホール自爆テロ事件(英語版) 75 340
2016年3月22日  ベルギー ベルギー連続テロ事件 32 340
2016年3月19日  トルコ イスタンブール爆弾テロ事件(英語版) 4 36
2016年3月13日  コートジボワール グラン・バッサム銃撃事件(英語版) 19 33
2016年3月13日  トルコ アンカラ爆弾テロ事件(英語版) 37 127
2016年2月17日  トルコ アンカラ爆弾テロ事件(英語版) 29 60
2016年2月2日  ソマリア ダーロ航空159便自爆テロ事件(英語版) 0 2
2016年1月14日  インドネシア ジャカルタ爆弾テロ事件(英語版) 4 24
2016年1月12日  トルコ イスタンブール自爆テロ事件 13 9
2015年12月2日  アメリカ合衆国 サンバーナーディーノ銃乱射事件 14 24
2015年11月27日  アメリカ合衆国 コロラドスプリングス病院銃撃事件 3 9
2015年11月20日  マリ バマコ・ホテル襲撃事件(英語版) 20 9
2015年11月13日  フランス パリ同時多発テロ事件 130 368
2015年11月12日  レバノン ベイルート自爆テロ事件(英語版) 43 239
2015年10月31日  エジプト  ロシア コガリムアビア航空機爆破テロ事件 224 0
2015年10月10日  トルコ アンカラ爆弾テロ事件(英語版) 109 500
2015年10月2日  オーストラリア ニューサウスウェールズ警察本部銃殺事件 1 0
2015年9月17日  ドイツ ベルリン婦人警官襲撃事件 0 1
2015年8月21日  フランス タリス9364号列車内銃乱射事件 0 3
2015年8月17日  タイ バンコク爆弾テロ事件 20 125
2015年7月31日  パレスチナ ドゥマ村放火事件(英語版) 3 1
2015年7月20日  トルコ シュリュジュ自爆テロ事件(英語版) 33 104
2015年6月26日  チュニジア スース銃撃事件 38 39
2015年6月26日  クウェート クウェート市モスク自爆テロ事件 27 227
2015年6月26日  フランス サン=カンタン=ファラビエ工場襲撃事件 1 2
2015年6月17日  アメリカ合衆国 チャールストン教会銃撃事件(英語版) 9 1
2015年4月2日  ケニア ガリッサ大学襲撃事件 148 79
2015年3月18日  チュニジア バルド国立博物館銃乱射事件 22 42
2015年3月5日  大韓民国 リッパート駐韓大使襲撃事件 0 1
2015年2月14日-2015年2月15日  デンマーク コペンハーゲン連続銃撃事件(英語版) 2 5
2015年1月9日  フランス ユダヤ食品店人質事件 4 9
2015年1月7日  フランス シャルリー・エブド襲撃事件 12 11
2014年12月16日  パキスタン ペシャーワル学校襲撃事件 148 114
2014年12月15日-2014年12月16日  オーストラリア シドニー人質立てこもり事件 2 4
2014年8月14日-2015年2月1日  シリア ISILによる日本人人質殺害事件 2 0
2014年5月24日  ベルギー ベルギー・ユダヤ博物館発砲事件(英語版) 4 0
2014年4月30日  中華人民共和国 ウルムチ駅爆発事件 1 79
2014年3月1日  中華人民共和国 昆明駅無差別殺傷事件 34 143
2013年12月29日-2013年12月30日  ロシア ヴォルゴグラード爆弾テロ事件(英語版) 32 85
2013年10月28日  中華人民共和国 天安門広場自動車突入事件 5 38
2013年9月21日  ケニア ケニアショッピングモール襲撃事件 67 175
2013年7月7日  インド ブッダガヤ爆弾テロ事件 0 5
2013年5月25日  インド チャッティースガル州国会議員団襲撃事件(英語版) 28 32
2013年4月15日  アメリカ合衆国 ボストンマラソン爆弾テロ事件 3 282
2013年4月17日  インド バンガロール爆弾テロ事件(英語版) 0 16
2013年1月16日-2013年1月19日  アルジェリア アルジェリア人質事件 48 7
2012年9月11日-2012年9月13日  エジプト  リビア  イエメン アメリカ在外公館襲撃事件 不詳 不詳
2012年8月5日  アメリカ合衆国 ウィスコンシン・シーク寺院銃撃事件(英語版) 6 4
2012年3月11日-2012年3月22日  フランス ミディ=ピレネー連続銃撃事件 7 5
2011年8月25日  メキシコ モンテレイ・カジノ放火事件(英語版) 52 10
2011年7月22日  ノルウェー ノルウェー連続テロ事件 77 319
2011年4月28日  モロッコ マラケシュ爆弾テロ事件(英語版) 17 25
2011年4月11日  ベラルーシ ミンスク地下鉄爆破テロ事件(英語版) 15 204
2011年1月24日  ロシア ドモジェドヴォ空港爆破事件 35 173
2011年1月1日  エジプト アレクサンドリア自爆テロ事件 23 97

2011年からの7年間で世界では報道されているだけでも91件の重大テロ事件があります。

平均すれば年に13件、月1件以上のペースで世界のどこかで重大テロが起き続けており、1件のテロにつき平均で40人が死亡、89人が負傷しています。

日本では以下のようなテロ事件が有名ですね。
・1995年 地下鉄サリン事件(13人死亡、6300人負傷)
・1994年 松本サリン事件(8人死亡、660人負傷)
・1977年 日本赤軍・日航機ハイジャック事件
・1974年 三菱重工爆破事件(8人死亡、376人負傷)
・1972年 連合赤軍・あさま山荘事件(3人死亡、27人負傷)
・1970年 よど号ハイジャック事件

また、とりわけ2001年9月11日のニューヨーク世界貿易センタービルのテロでは3000人近い人が亡くなっており、「テロ」という概念が世界に強く浸透した史上最悪の事件でした。

損害保険上のテロの定義と保険適用有無

損害保険上のテロの定義は、損保ジャパン日本興亜・海外旅行保険約款によれば、「政治的、社会的もしくは宗教・思想的な主義・主張を有する団体・個人またはこれと連帯するものが、その主義・主張に関して行う暴力的行為」とされており、他の損害保険会社、損害保険商品についてもほぼ同様に記載されています。

損害保険は「人、モノ、金、賠償」と大別することができ、企業でいえば以下のように言い換えることができるでしょう。

カテゴリ

保険の対象

保険商品

役員・従業員

傷害保険、労災総合保険、海外旅行保険など

モノ

所有財物

火災保険、動産総合保険、運送保険など

利益

利益保険など

賠償

対人・対物事故、または対人・対物事故を伴わない賠償

各種賠償責任保険

これらに沿って、それぞれテロによる被害が保険でカバーできるかどうかを確認してみます。(基本的に損保ジャパン日本興亜社の約款を参考にしています)

テロによる役員・従業員の死傷は保険でカバーできるか?
傷害保険では基本的に戦争、外国の武力行使、革命、政権奪取、内乱、武装反乱、これらに類似の事変・暴動によるケガについては免責(保険金支払対象外)としています。

保険商品開発上、そこまでのリスクは含んでいないということですね。

しかし、「戦争危険等免責に関する一部修正特約」というものが自動的に付帯されており、テロ行為によるケガについては保険の支払対象にしています。 

労災総合保険についても、「戦争危険等免責に関する一部修正特約」が付帯されているので、業務中にテロによるケガをして、政府労災の認定がおりた場合は、労災総合保険の保険金支払対象になります。

海外旅行保険については、保険金を支払わない場合に「テロ行為は除きます」とあります。つまり、海外出張中にテロでケガをした場合でも保険金支払の対象になります。

テロによる所有財物(建物、設備等)の損害および利益減少はテロでカバーできるか?
火災保険については、どの保険会社でも1証券あたりの合計保険金額が10億円を超える場合(工場物件の場合は15億円以上の場合もある)で、被保険者が個人以外の場合、テロによる被害については免責としているようです。

逆に、1証券あたりの保険金額が10億円以下だったり、個人所有の物件だったりすればテロによる被害でも保険金支払対象になります。

改めてですが損害保険上のテロとは、「政治的、社会的もしくは宗教・思想的な主義・主張を有する団体・個人またはこれと連帯するものが、その主義・主張に関して行う暴力的行為」とされていますので、保険会社としても大規模物件でなかったり、個人所有の物件だったりすればテロのリスクが低いと見ているのでしょう。

ただし、大規模施設だったり、集客施設こそテロリスクがあるといえます。大規模物件でも、一部の保険会社では特約でテロカバーを付帯することも可能です。

動産総合保険では、保険金を支払わない場合に、戦争、外国の武力行使、革命、政権奪取、内乱、武装反乱その他これらに類似の事変または※暴動とあります。
※暴動=群衆または多数の者の集団によって、全国または一部の地区において著しく平穏が害され、治安維持上重大な事態と認められる状態をいいます。

テロの定義と似ているようで異なる部分もあるので、テロと思われる行為による被害については保険金支払対象になる場合とならない場合があるのでしょう。ケースバイケースといえます。

運送保険については、テロによる保管中の貨物の損害は免責で、輸送中は保険の支払対象となります。

建設工事保険については、日本国内であれば保険金額が15億円以上の場合、テロによる被害は免責です。一定以上の物件についてはリスクが高いので免責としているのですね。海外での建設中の建物等は規模に関わらずテロによる被害はすべて責です。

 

保険金額15億円未満

保険金額15億円以上

国内の建設工事

×

海外の建設工事

×

×

テロによる事故で賠償責任保険は関係あるか?
賠償責任保険は、被保険者が法律上の賠償責任を負う場合に発動する保険です。

テロによる事故で、たとえば自社施設内に来ていた他人(来場者)がケガをした場合、被保険者(自社)に過失があるとは考えにくいので賠償責任保険が支払われることはないでしょう。

一方、来場者が多い施設で、施設に入場する方を包括して傷害保険を付保する「施設入場者傷害保険」というものもあります。

「施設入場者傷害保険」でしたら被保険者の過失有無に関係なく、傷害保険金を支払うことができるので、たとえばお見舞金として何かしら払えるようにしておきたい、等のニーズがあれば検討しても良いかもしれません。

まとめ

物理的なテロ攻撃に対しては、一定程度まで保険でカバーできますが、保険金額10億円以上など大規模物件は支払対象外だったりします。

保険種類など テロカバー
傷害保険
労災総合保険
海外旅行保険
火災保険 保険金額10億円未満
火災保険 被保険者=個人
火災保険 保険金額10億円以上(工場物件は15億円以上の場合もある)

×
(特約で〇にすることも可)

動産総合保険
運送保険 輸送中は〇
建設工事保険 国内 保険金額15億円未満
建設工事保険 国内 保険金額15億円以上 ×
建設工事保険 海外 ×

自社にとってテロリスクがわずかでもありそうだという場合は、加入している保険を今一度確認してみてはいかがでしょうか?

(注)当サイトでは保険について一般的と思われる内容を記載しております。個別具体的な保険契約内容についてはパンフレットや重要事項説明書、約款をご確認いただくか、保険代理店または保険会社へお問い合わせください。
リスクマネジメントレポートピックアップ!

※PDFファイルが開きます。
改めて海外危機管理を考える~アルジェリアにおけるテロ事件を踏まえて~(6ページ2013.2.4インターリスク総研)

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